政府はFATFへの報告を行ったが、モンゴル国民への説明責任を果たしていない

2019年10月、モンゴルはマネーロンダリング、テロ資金供与へ国際的に協調して取り組む政府間機関であるFATFの「グレーリスト入り」という金融リスクの高い国として指定された。先週金曜日にモンゴル銀行及び財務省など政府機関の担当者が記者会見を行った。モンゴル銀行のL.ラフガースレン総裁は「FATFの指摘した6つの改善課題を履行したことにより、モンゴルはFATFの次の定例会議でグレーリストから抜け出す条件を満たしたと評価されるだろう。政府はチーム一丸となって協力して取り組んだ成果だと見ている。ただCOVID-19に関連して、モンゴルがグレーリストから除外される会議がいつ開催されるかは不明である」と話した。

この会見は選挙のためのショーであることが伺える。なぜならば、政府は2つの違反、欠点を無くしたと公表した。

まず、非金融ビジネスへの監督、活動が不十分である。宝石、金、銀の取引、不動産、さらにはそれらに関わる法律関係者、公証人役場などに対する監視が不十分である。これに関して、政府は関連する法律の立案や改正を担当機関に指示したという。金融規制委員会はこれらの分野の監督、登録を行う法的環境が整ったと話した。

次にマネーロンダリングに関する事件の捜査、検察庁が起訴するか不起訴にするかの決定を出す上での監視が不十分である。これに関しても政府は、モンゴルの賄賂対策庁、警察庁、諜報庁、検察庁、裁判所などの法執行機関が協力して取り組み、報告を行ったと話した。政府はFATFへ報告を行ったが、モンゴル社会、国民への説明責任を果たしていない。

これら2つの問題は、モンゴル国内で全く解決されないままである。そのため、6月24日に国民それぞれが政府に対して評価を出すだろう。(訳注:6月24日は4年に一度のモンゴルの国政選挙投票日)

EUは、モンゴルをブラックリストに入れ、リスクの高い国だと世界に向けて発表した。これはFATFのグレーリストの写しであるため、もしグレーリストから離脱できれば、EUのブラックリストからも離脱できるとみている。

土地売買と子どもに優しくないウランバートル

デンジーン・ミャンガ地区から国立公園付近までの建築工事が行われており、この工事により発生した巨大な水溜りの中で遊んでいた子ども4人が溺れて亡くなった事件が起きた。こどもの日の4日前のことだった

モンゴル国の人口全体の35.4%となる120万人は未成年の子どもである。モンゴルは子どもの日を1952年から記念してきた。1995年に母子の日、2003年に子どもの日という風に呼ぶようになり、全国の祝日として記念して来た。デンジーン・ミャンガ地区はゲル地区であり、このゲル地区に住む子どもには遊べる公園や場所がなく、またプールに入るお金がないためこの工事現場の水溜りで遊んでいた。そして今回の4人の子どもは命を落とした。

これはモンゴル政府、ウランバートル市役所、歴代市長等が責任を負うべき事件である。S.アマルサイハン市長は、国立公園のS.エルデネトゥール所長を解任することで、この問題を幕引きしてはならない。

ウランバートル市の市長は、私たち市民によって選ばれるわけではなく、政党(首相)によって任命されるため、市長は市民の前に何の責任も負わない。そのため、ウランバートル市の土地および公共の財産を、市長を任命する政党の要職にある者たちが横領し財を成して来た。これについて元市長たちは「自分たちは無関係だ」と主張してきた。

すべての失敗を前市長、つまり他人のせいにし、何の責任も負わない。今回の選挙に立候補している者たちが、ウランバートル市に何の問題もないと笑顔で国民に語り変えていることが、それを証明している。

ウランバートル市には開発計画がないと言っても過言ではない。もし、開発計画があるとしたら、それは市民にとって優しくないものであり、私たちの生活を意図的に困難にする“特別計画”のみである。もし開発計画があり、それを実施しているというならば、それは立ち並ぶ高層ビルがすべての小中高学校の運動場、子どもが遊ぶ公園、道路、防災ダムを取り壊して建てるように計画されているということだ。

ウランバートル市内のすべての公園を歩道も含め売却したため、高層ビルの間を車のみが走り、歩行者の存在を考えない死の都市となった。腐敗に溺れる者たちが学校の運動場、子どもが遊ぶ公園、市内の駐車スペースを建設会社に秘密裏に売却してきた。ウランバートル市内の上下水道、電力のインフラのキャパシティと分布は、需要に比べて明らかに遅れている。だからインフラネットワークに近いすべての土地に高層ビルやマンションを建設する特別許可を公式に、また非公式に交付するようになった。

土地開発の特別許可は鉱物資源の特別許可を受けるのと同様、一般市民にとって実態が不明である。それらの特別許可の第三者への譲渡、売却はモンゴルでは最も利益率の高いもので、何れかの税金も掛けられていない。これが政府という名の防壁の内側で繁栄する腐敗の最大の原点である。

ウランバートル市民もまた責任を負うべき存在である。政府は市民の財産を弄び、それで財を成し、山や土地を奪い取っているのに、何も声を上げず見て見ぬ振りをしてきたからだ。自分たちの声を一つにし、団結できていない私たちにも責任の一端はある。 ここで全国民に言いたい。6月24日に政権を完全に交代させ問題を解決できるように、今回の選挙には全員が積極的に投票するようお願いしたい。