モンゴルが輸入している医薬品の3分の1は偽造品であり、卸売価格は世界保健機関の定価を5〜6倍も上回っているとCh.フレルバートル財務大臣が言った。いつまで私たちは高価で偽物の薬を服用し、有害な食品を摂取し、命と健康を危険にさらし続けるのか?

モンゴルの医薬品市場の現状

BMC Public Health誌に掲載された2014年の独立調査では、4県と首都ウランバートルの薬局に一般的な9種類の医薬品からサンプルを採集し、分析を行ったとある。地方の薬局での調査では、388製品の医薬品をサンプル抽出し、そのうち69製品(17.8%)が標準的な成分を含まないものだった。また、85製品(21.9%)の医薬品は登録されていない薬物だった。また、ウランバートルの薬局では、採集した医薬品サンプル848製品のうち、112製品(13.2%)が標準的な成分を含まないものであり、150製品(17.7%)が登録されていない薬物という結果が出ている。

2017年に実施された同様の調査では、ウランバートルと地方の118店舗の薬局で、11種類の医薬品から1770製品のサンプルを採集し分析したところ、179製品(10%)は非標準的なもので認可してはならないという結果が出ていた。

また、モンゴル国内で製造された医薬品は、輸入された医薬品よりもその品質が低いという結果が出ている。登録されていない医薬品は76種類(4.3%、ウランバートル3.8%、地方5.8%)にのぼる。

医薬品の価格調査は2004年に初めて実施された。当時、政府が購入する医薬品の価格は世界の標準的な価格より2.4倍も高かった。更に薬局では3.99倍も高値で販売されているという調査結果が出ていた。2012年に実施された調査でも同様の結果が出ていた。現在も薬剤価格が当時と変わっていないということは、財務大臣の発表からも明らかである。だが国民はこの高価な医薬品を買う他に選択肢がない。日々の食料品を買うことさえ困難な低所得層世帯にとって、これは深刻な問題である。モンゴル国民の3人に1人が貧困である現状を踏まえると、これは大きな社会問題と言える。

医薬品=収益性が高いビジネス

医療分野は収益性が高いビジネスだということは、ウランバートル市内のあらゆる通りの薬局をみればわかる。2019年の時点で、モンゴルに医薬品を供給している企業は40社、356の支店がある。また全国には1,541の薬局があり、そのうちの591が地方、950がウランバートルに所在している。

モンゴルの医薬品市場への政府の介入は相対的に少ない。政府は燃料やガソリンの価格を決定するように医薬品の価格を決めてはいない。医薬品の市場には、民間企業のみが事業を展開している。

モンゴルの市場は小さいため、外国の企業はそれほど興味を持たない。加えて流通コストが高いことも影響している。

モンゴルでは4,696種類の医薬品が登録されており、その4分の1は国産の医薬品である。その他は世界58ヵ国(インド12.4%、韓国9%、ロシア6.4%、ドイツ5.8%)から輸入されている。 2018年の実績では、モンゴルは3,625億トゥグルグ分の医薬品を輸入し、卸値ベースで2,990億トゥグルグを国内で販売した。

人口増加に伴って保健分野の予算支出は毎年増え続けている。昨年、保健分野において国家予算として8,320億トゥグルグが費やされ、その14%は医薬品購入に充てられている。モンゴルで医薬品の価格が高い理由の1つは、各国立病院がそれぞれ独自に医薬品を購入していることである。県や区の病院も同様である。本来、こういった公立の病院全てに医薬品を納入する事業として入札を実施すれば、国内市場において標準価格が設定される。しかし、各病院は入札を実施したと言うが、入札のプロセスは非常に不透明である。

また、入札の際に基礎となる予定価格を設定するために、国際基準価格と比較したか否かも疑わしい。こういった現状から、国立病院や政府機関は、協力して価格指数を出す形で購入基準価格を定めることができる。しかし、今まで政府は何の手も打たず、医薬品の価格高騰を助長している。

解決策を模索する

私たちは医療制度を改革するべきだと長年話して来た。しかし、今まで大した変化はなかった。モンゴルでは、医薬品の品質に対して保健省ではなく、専門監察庁が監視している。専門監察庁は、年間約400の薬局に監査を実施している。しかし、この重要な監査活動に専門監察庁の人手が足りていない。

そして過度な医薬品の広告やCM、医薬品販売業者と医師たちのビジネスの繋がりによって、モンゴル人は医薬品を、特に冬場になると、食事をするかのように服用するようになった。

数十種類もの薬を服用しているにも関わらず、病気は完治するどころか再発する。それはさらなる薬の消費に繋がり、医薬品自体が不足し価格が上がる。国内製薬企業や医薬品供給企業は、国に登録された医薬品のみを製造もしくは輸入販売している。しかし、現実は薬局で登録されていない薬が販売されている。これは市場に出回っている医薬品に対する専門観察庁の監視の現状を現している。

S.ランバー氏は、保健大臣を務めていた時から世界各国のように食品医薬品局(FDA:Food and Drug Administration)の設立を提案してきた人物である。しかしその提案は、専門監察庁の抗議によって実現してこなかった。世界各国の食品医薬品局が、相互に食品や医薬品の問題、基準、変更、改善について情報交換を行っている。こうした情報共有できる国々が協力し、最優先に必要かつ高価な医薬品やワクチンを共同で購入すれば、安価に正規の医薬品を購入することも可能となる。

今日、U.フレルスフ内閣は、医薬品・医療機械・器具のみを対象とした品質の監視や国の医薬品の一括した購入を担う専門のエージェンシーを設立しようとしている。それに先立ち国会も医療救援法や医療保険法の改正を行った。また、病院の業務の達成度合いによって補助を交付し、これによって適切な価格の医薬品をすべての薬局を通じて国民が購入できるようになると話している。

また医療保険の独立した制度を構築すること。これには保険事業を医療サービスなどの提供者から切り離す必要がある。そうすれば、すべての保険機関はリスクを下げるために監査活動を最も効率的に行うことができる主体となり得る。

ダムバダルジャー・ジャルガルサイハン