B.エルデネダライ氏は2010年にモンゴル国立大学で政治学修士号を取得しました。その後2015年に政治学博士号を取得しました。博士号取得の論文テーマは「政党の資金調達:外国における事例とモンゴルが直面している問題」です。自分の研究テーマをもって2009年から約130の研究論文、論説、研究プロジェクトを執筆しています。2015年からNGO「社会政治教育」の代表を兼務しています。

J(ジャルガルサイハン): あなたはモンゴルが直面している問題、つまり「政党の資金調達: 外国における事例とモンゴルが直面している問題」という非常に興味深いテーマをもって博士号を取得しました。この10年間、政党とその資金調達について執筆を多数してきました。2017年の政党の資金調達について直面している問題は何ですか?

エルデネダライ: 世界の多くの国では政党の資金調達及び政治資金調達に関して法律で定められています。政党の資金調達は秘密裏に行われ、その責任を追及できないものを賄賂と言います。政治が賄賂と関係すると政治的発展の問題となります。これが誰の損失になるかと言えば、それは国民です。モンゴルは民主主義国家に移行してから新しい政党の数が増えました。常に選挙に勝ち議席を獲得する政党もあります。いかなる時でも政党の資金調達は透明性があり、公開されるべきです。政党とは、国民と政治を繋ぐ架け橋とならなければなりません。言い換えれば政策という橋ということです。モンゴルには政党法があり、そこに政党の資金調達についての規定が明記されています。しかし、この法律は2005年に成立されたものであり、今の政党で生じている否定的な問題を解決するには不十分です。この法律の改正が必要になっています。

J: 実際の選挙報告書は正確に出されるものではありません。法律上、個人及び企業から受ける寄付金の限度は定められていますか?

エルデネダライ:  選挙の時期とそれ以外の時期の報告書はどちらも必要です。しかし今のモンゴルは、政党が選挙の時だけ報告書を出しています。それも収入と支出だけを書いた報告書を出しています。最後に改正された政党法では、報告書は監査機関の承認を受けて公表しなければならないと定められています。政党の支援を受け出馬する候補者は、選挙の時の報告書だけを出しています。選挙ではない時の報告書は、国民はおろか党内にも秘密にされています。選挙法では、寄付金の限度は個人の場合は300万トゥグルグ、企業の場合は1500万トゥグルグと定められています。国家監査事務所が出した報告書をみると、実際に誰がどの政党にいくら寄付をしたか?どんな企業が寄付をしたか?全部記載されています。一見、法律に従って報告書を公表して監査上も問題がないように見えます。しかし、その資金の出所は?どこから入って来たのか?どのように使われているのか?何か違法に得られたお金ではないか?などを調べて監査する制度はありません。

J: 法律に外国からの寄付の受取の可否について規定はありますか?

エルデネダライ: 外資企業、宗教団体、18歳未満の人からの寄付を受けてはならないという規定があります。寄付金とは基本的に政党や候補者の政治活動を応援するためのものです。最近の世界的な傾向では、法人から寄付を受けることを禁止するのが主流となっています。その理由は、法人からの寄付が大きなスキャンダルになるからです。例えば、エネルギー、鉱業関連の企業は政党に多大な寄付をし、その見返りとして政治家が当選後に企業に有利となるように法律を改正するなどの問題があります。また犯罪組織、マフィアが政党や候補者に大金を寄付して、見返りに自分たちに良い状況を作らせるケースもあるでしょう。

J: あなたは覚えていますか?2008年の選挙後、政党への寄付の多寡によって就ける役職が決められました。ある人の寄付金は他より2倍だったので、議員ではなく大臣になれたという記事を多く目にしました。当時の記事の真相はその後どうなりましたか?その真相を誰も追わないのはなぜですか?

エルデネダライ: モンゴルの政党法では見返りを期待して政党に寄付をしてはいけないという規定はありません。倫理的には寄付した見返りに役職をもらうということはあってはならないことです。例えば、モンゴルでは選挙になると政党内から立候補するために政党に大金を寄付します。それは憲法上の選定権の侵害にあたります。さらに言うと国民が選択する権利も侵害されているということになります。現行の法律では見返りを期待して政党に寄付をしてはいけないという規定がないから、これらの問題が解決されません。ですからこのように法律の抜け穴が悪用されるのです。

J: 今では選挙自体が大きなビジネス、金儲けの一つの手段となっています。今日のモンゴル社会において、国民を代表する者が国民の票をお金で買ってしまっているので、腐敗や歪みが拡大していると思います。これについて法律上どのように定めていかなければならないと思いますか?他国ではこのような問題をどのように解決していますか?例えば、ドイツではどうですか?

エルデネダライ: 世界の国々では政府が政党に資金を交付し、その資金の使途には厳しく監査をします。政府が政党に資金を交付し、その運用を監視することは非常に良い方法です。ドイツでは政党に大きな資金は交付されません。調査によれば、政党の費用の70〜80%を選挙広告が占めているとありました。この費用を減らし、全ての候補者に公平な機会を与えるようになっています。大規模な宣伝広告を印刷するのではなく、その枚数とページ数まで指示されています。各政党の宣伝広告、活動内容は統一された規格で雑誌のように製本され国民に配布されます。これは政党の費用を削減している好例です。

J: イギリスには「選挙委員会」というものはありません。しかし、「有権者委員会」というものがあります。「有権者委員会」はどの政党にも所属しない人たちで構成され、選挙時の各政党の報告書の真偽を確認します。選挙権がある国民が「有権者委員会」を設立しても良いのではないかと思います。イギリスはできています。モンゴルではできないのでしょうか?

エルデネダライ: モンゴルの政党法を見ると、政党法に違反した者に4〜6万トゥグルグ、政党の場合は20〜25万トゥグルグの罰金を科すと定められています。しかし、実際に政党に対して20万トゥグルグの罰金を科したところでどうなりますか?過去に罰金を科した例は一つもありません。

J: 以前、国会議員は10億トゥグルグまでの資金を国から与えられていました。その資金は自由裁量で何に使うかを決めることができました。今では形が変わり10億以上の資金を使えると思います。地方の政府関係者も国から資金をもらっています。これに関して話を聞かせて下さい。

エルデネダライ: 現行の政党法をみると、政党は政府から2つの資金を受けています。政府は政党に対して有効投票数に1000トゥグルグをかけた資金を交付しています。もう一つは議席数に比例して交付される資金です。しかし、政党法にはありませんが、上述した2つの資金の他に更に2つの資金を交付しています。地方市民代表に選出された代表者席の資金を政党に交付しています。これは違法です。このようなケースは世界のどこにもありません。もう一つが国会議員の選挙区に使う資金として10億トゥグルグまでの資金を交付しています。その選挙区で実施されるべき活動を実際に行う機関は政府です。しかし、議員がその資金で活動することは違法です。

エルデネダライ * ジャルガルサイハン