一昨日、U.フレルスフ首相率いる内閣は国民に向けてこの100日間の公務を報告した。1時間の報告で首相は主な公務30件を強調した。その中で2016年に「集中治療」を受けていたモンゴル経済を2017年に「一般病棟」へ搬送し、2018年に「退院」させて家庭で治療ができるようにするとのこと。そして2019年には職場を提供し、2020年に安定して働けるようにすると言った。

過去100日間の治療

2017年10月20日に国会議員15人が入閣し成立したフレルスフ新内閣は、2018年1月28日に100日目を迎えた。新内閣が実施してきた政策の中でマクロ経済という観点から二つの事柄を採り上げたい。

一つは、予算政策の変更である。国際通貨基金(IMF)の拡大信用供与措置により外国から低金利の融資が入ったため、政府は国内の銀行から高金利で融資を受けることをストップした。商業銀行は国ではなく、民間セクターに融資するしか他に選択肢がなくなった。そしてトゥグルグのレートも安定してきた。

倒産した銀行の資産を受け継ぎ設立されたステートバンクの70人の支社長の半数を解雇した。ステートバンクは2009年に政府指令により設立され、全国に500支店を展開し活動を行ってきた。当銀行の株式の25%を財務省、75%を預金保険コーポレーションが保有している。実は政府も預金保険コーポレーションも株式を保有すべきではない。なぜならこれが銀行の民営化への始めの一歩になるからだ。

もう一つは、ガソリン価格の自由化を図る第一歩を踏み出した。A-80、A-92 ガソリンの特別税を廃止したことによって、ガソリン価格を政府ではなく消費者が決めるという健全な経済動向ができた。ガソリン供給の独立性を促進するために長年に渡って話してきた石油精製工場の建設場所を決め、建設工事をインド政府からの借款で実施することとなった。

これから880日間の治療

首相は今の悪い景気の主な原因を「私たちが強いられている苦労は、失業と貧困、無責任で規律がないことにある」と言及した。その公約の内容は次の通りだ。

政府は残された任期において経済を適切にマネジメントして行く。全ての公務員が仕事に対して適切な順序と規律をもって取り組めるように、2018年を規律と責任の年にする。財政赤字を削減する。経済分野において明確な目標を設定する。例えば、空輸業の民営化と観光分野の成長を図る。3部制の学校を2部制にする。定年年齢の設定を柔軟にする。個人所得税を引き上げず、10%を維持する。住宅ソフトローンを継続させ、そのために今年は1200億トゥグルグを国家予算から出す。モンゴル銀行が持つ負債の返還のための1800億トゥグルグと合わせて3千億トゥグルグとなる。2019年4月からは日常生活で使用される石炭をウランバートルに入れない。

フレルスフ首相は新内閣が今まで何をしてきたか、これから何をするかをとても明確に分かりやすく、力強く語った。これが現政権は多くの問題を解決してくれるのではないかという期待感を生んでいる。しかし、これから実施していくことを政府と民間のどちらがやるのか、どのように進めるのか、市場原理自体をどのように利用するのかについてはほとんど触れなかった。

治療方法

首相が言った経済の診断は正しい。しかし治療方法が不明確で科学的な根拠が弱い。

規律がない、無責任であることは、正義と法の支配が成り立ってないことが原因である。政府に浸透した汚職や賄賂と決別して初めて正義というものが成立する。汚職や賄賂の原因は各政党の資金調達方法にある。政権を握っている政党の党首として首相自身が、人民党の65人の国会議員のうち15人が入閣した内閣の力で政党法の改正を至急行うべきである。また、公共の財産を横領し騙し取った者に党所属の如何に関係なく責任を追及しない限り、正義は成立しない。

フレルスフ首相はウランバートル市の土地、特にボグド山の周辺地、トール川、ヤールマグ地区の土地を誰がどのように横領したかを突き止めるべきだ。そしてそれらの土地を公共の財産として戻すか、或いは土地代を払わせるだけでも賄賂問題の半分が解決される。

『魚は頭から腐る』という諺がある。魚も政府も頭から腐る。尻尾(下層の職員)からは腐らないという意味だ。だから政府も上層部から腐敗を止めなくてはいけない。首相は100日前に「私は死ぬことを恐れない。恐れることは一つだけ。それは国民の信頼を失うことだ」と言った。

失業と貧困に関して、経済活動における政府の参入が非常に多くなったこと、とりわけ国有企業が政党のものになり例外なく赤字を垂れ流している。その補填のために教育や保健医療分野に使う予算を国有企業が使い果たしている。国有企業を政党の党員にではなく、株式会社にして国民が所有するようにした方が良い。鉱業や空輸業及び鉄道、水道、電気など全ての会社の60%を民営化する必要があると思う。

最後に価格自由化を図り、「価格委員会」などを解散させるべきだ。公正な競争を支援し、閣僚を民間企業から切り離す。そうすることで首相がやろうとしている経済改革を市場がやってくれる。15人の閣僚も国民もその目で全てを見届けることができる。

首相がこれら3つのことを実施することができれば、始めることができれば、国民は首相が望むように「幸福」に暮らすことができる。

ダムバダルジャー・ジャルガルサイハン