サインブヤン・アマルサイハン氏は、カリフォルニア州フレズノ・シティ・カレッジ、ユタ州カレッジ、サウスウェスト大学をそれぞれ卒業しました。アマルサイハン氏は科学、情報技術センター、在中国モンゴル大使館の領事官、American Trade & Development社の対外貿易マネージャー、Oyunii Undraa group社の社長、取締役会長をそれぞれ歴任してきました。

J(ジャルガルサイハン): こんにちは。近々、ウランバートル市の住宅状況について話し合う国際会議が開かれるそうです。ウランバートル市がかかえる住宅問題については、歴代の市長たちも取り組んできました。しかし、この問題は未だに解決策を見いだせず、どうにもできない状況になっています。首都住宅コーポレーションという組織が設立されましたが、この組織の設立目的は何ですか?

S.アマルサイハン: 首都ウランバートルの住宅問題は都市計画の問題といえます。私たちはこれまで長年実施されてきた都市計画を、さらに上の水準に引き上げるために、住宅政策プログラムを適切に実施するように努めています。ゲルの住宅化を進める形で新しいインフラを整備し、都市計画を具体的な調査や計算に基づいて、将来の多様なニーズに対応できるようリスクの少ない都市を建設するという側面に立って問題に取り組んでいます。

そのために何から始めるべきかというと、住宅政策によるプロジェクトとその実施や指導に当たる管理者を確保し、民間企業の参入を促進する形で住宅プロジェクトの質の高い実施を目指しています。その一環として首都住宅コーポレーションを設立しました。

設立の理由は、国の予算に直接左右されず、また負担となることなく市場原理に基づいて住宅プロジェクトを実施することと、一刻も早く多くの市民へ住宅を供給することを実現させ、ウランバートルの大気汚染削減を図るためです。

住宅プロジェクトを国の予算で実施することはとても難しいと考えます。第1に、限られた予算しか割り当てられないこと。第2に、市場原理の下で発展している住宅市場や企業の活動を妨げるものとなってはいけないということです。つまり、ウランバートル市が政策を実施し、企業をプロジェクトへ参加させ、協力してゲルの住宅化を進めようとしています。

J: ということは首都住宅コーポレーションという組織は、住宅を建設するのではなく、民間企業に委託するということ。そして住宅建設用地を誰が購入し、誰が所有することになるかを明確にする。さらに住宅購入が困難な低所得者向けに賃貸住宅を提供すると理解してもよろしいですか?

S.アマルサイハン: そうですね。今話している住宅問題は、そもそも土地管理問題でもあります。都市計画が乱れた原因は、土地管理に市政府が関わらず無計画に進められてきたことにあります。その結果、無秩序な居住地の拡大が進みました。この拡大を食い止め、元に戻すために、私たちは土地の所有化、土地の価格化、管理と計画を進めています。これを外部の機関にやってもらうと時間がかかります。ですが市が直接、土地管理部を通して行うと、再び以前の過ちが繰り返される恐れがあります。

そのため、私たちは今まで無計画に交付された土地を首都住宅コーポレーションの名義に戻し、その上でインフラ敷設を行います。その新しい土地をもう一度整備します。例えば、1万世帯分の住宅を建てる際に、土地を1,000世帯ごとに区分し、入札を実施して開発業者10社を選びます。こうすることによって土地が価値を持つようになり、それに伴い住宅も価値を持つようになります。しかし、住宅が価値をもっているからといって、多くの国民には到底払えない価格で住宅を提供するということではありません。

所得に応じた住宅といって、一部の人は安価の住宅を押し付けようとしています。しかし、所得に応じた住宅とは、必ずしも担保や前払金を必要とするものではなく、住みながら購入する機会を提案しているということです。

J: インフラ敷設の資金をどこから調達しますか?

S.アマルサイハン: 市がインフラを整備するべきと考えています。土地区画も市が決定します。一部のインフラ整備については企業に委託し、協力したいと考えています。これはどういうことかと言えば、新しく建設する住宅を必ずセントラルヒーティングシステムに接続するというのは困難ということです。理由はセントラルヒーティングシステムのキャパシティ、予算、距離などの問題があるからです。そのため、市は民間企業に対してこの住宅化プロジェクトに参加するならば、自分たちでエネルギー設備(火力発電所、太陽光発電所、風力発電所など)を整備すること。そしてそのインフラサービスをその住宅に入居する住民に販売していくというシステムで運営することを条件としています。

J:  住宅を建てるまでは市と民間企業が実施します。では、住宅が建った後の管理はどうなりますか?どこが管理しますか?既存の住宅所有者組合などと同じ形態で管理しますか?例えば、今モンゴルでは建設会社が土地を購入するところからはじめ、住宅建設、販売、管理までを一貫して行っています。これはある意味、独占している形になっています。これに関してあなたの見解を聞かせて下さい。

S.アマルサイハン: これは住民の頭を悩ます問題の1つとなっています。建築会社は住宅を建て、販売し、そこに住宅所有者組合を立ち上げ、住民から水道光熱料金や公共施設利用料金を徴収します。徴収した料金を電力会社や水道局に支払わない場合もあります。そのため、住民は電気や水道を止められることが少なくありません。

私たちはこのような事態をなくすために、住宅所有者組合に関する法律や規定の改正を考えています。そもそも住宅所有者組合自体が必要かどうかを明確にしたいと考えています。住宅は個人が所有しているものです。ゲル地区と同様です。ゲル地区の家の柵が壊れた場合は、住民は自分で柵を修理します。これと対照的に、もし住宅で水漏れがあったとします。住民は市に修理を要求します。住宅所有者組合は高い費用を徴収しておきながら、何もしないからです。責任の所在が不明なため、こういった問題は多々起こります。そのため、私たちはまず、住宅所有者組合に関する法律を改正します。また、建築会社や建築業組合など関係者と協議し、住宅所有者組合という名を住宅所有者サービスセンターとし、本来のサービスを提供させるなど、制度的に変えなければならないと思っています。

J:  長年、議論されている「首都の権限に関する法」があります。この法律はいつ成立しますか?

S.アマルサイハン: この法律が年内に成立することを期待しています。私たちは以前、国会に提出された法案を取り下げ、変更・修正を行い、再び国会に提出しました。この法案では、首都が有する権限を明確化し、経済的にも首都単独で問題を解決でき、街の発展を推進していくことに重点を置きながら、その他の主要な条項を盛り込みました。この法案が秋期国会で可決成立すれば、首都は法的権限を根拠に、市内の財産により価値をつけ、経済活動に回していく事ができるようになります。

J:  皆さんが国会に提出した法案では、ウランバートル市を2つに分けています。ウランバートルは1つの都市にもかかわらず、トール川から南にある地区は省き、トール川から北にある地区のみをウランバートル市としています。これはなぜですか?

S.アマルサイハン: これについては積極的に議論しています。現在ウランバートル市の一部は、市に所有権があるかないか不明な状況があります。市ではなく国に所有権が移った場所に都市計画が進み、数十万人が居住してしまっています。市に所有権ないため、インフラを整備することができません。また、国から情報を得ることもできません。国が誰にどこの土地を交付したかが不明です。このような状況を変えるため、私たちは市、県、国の管轄する土地のデータベースを統合しようとしています。土地に関する情報を一箇所から入手できるように取り組んでいます。現在、土地に関する違反問題は25,000件あり、その解決に取り組んでいます。

例えば、契約書や所有証明書もないのに、ウランバートル市が土地の権利書を発行しているケースがあります。これは一部の職員がその権限を使って秘密裏に土地を所有しているということです。市はこういった問題を解決し、市が借地料を徴収できるようにします。現在、ウランバートルにある住宅はどこも借地料を払っていないと言っても過言ではありません。

一部を除き、政府行政機関の建物も借地料を払っていません。また、ゲル地区の住民はみんな土地を所有しているのに、固定資産税を払っていません。市も固定資産税を徴収していません。それで市は収入がないと言います。それならば、市の収入を増やすためにすべての企業や政府機関から借地料や固定資産税を1㎡ごとに徴収するようにならなければなりません。

J:  それはいつから始めますか?

S.アマルサイハン: 2020年からです。2020年は土地改革の年になります。

J:  もう1つの問題は、ウランバートル市の子どもに関連する土地問題です。例えば、子ども劇場の建物に銀行が入っています。昔はウランバートル近郊にロシア・モンゴル子どもキャンプがありました。それが今は全く運営されていません。子ども病院の庭には全く関係のない建物が建っています。あなたはこれを優先的に解決する考えはありますか?

S.アマルサイハン: あります。この問題は特に重要視しています。子どもたちのためのキャンプ場どころか、遊ぶ公園すらなくなっています。1つの例を言うと、幅15m、長さ30mの子どもサッカー場を分割して売却してしまっています。こういった事があるので、市はすべての学校の土地の調査を実施しています。

J:  昔はすべての学校に運動場がありました。それが今ではほとんどの学校の運動場が売られて無くなっています。最後の質問です。今、ヤールマグ地区に住宅が数多く建設されています。バト・ウール前市長は、市長就任時に「この土地を誰が交付したかを明らかにする」と言っていました。彼が市長になった後、私は彼に「ヤールマグ地区の土地問題は明らかになりましたか、競売もされずに売られた土地を取り戻せそうですか」と聞きました。彼は、「個人の財産に下手に触れてはいけない」と言いました。あなたはこれをどう思いますか?ヤールマグ地区の土地を誰が交付し、誰が所有しているかを確認しますか?

S.アマルサイハン: ヤールマグ地区の土地の5分の4は国が所有し、交付しています。

J:  国というのは自然環境・観光省ですか?

S.アマルサイハン: はい、そうです。さらに無許可の建物が多く建てられています。それらを必ず片付けていきます。市の都市計画にある6車線道路を通す予定地に3社が柵を建てています。市はワーキングチームを結成し、建設工事を止め、取り壊しに取り掛かっています。それらの企業に、市の都市計画に沿って自分たちのプロジェクトを実施し、協力するかを確認し、もし協力できないならば、建設を許可しないと通達しています。この取り組みには時間と人が必要となっています。

J:  このような現状の中で、すべてをあるべき姿に戻すことは簡単ではないと思います。しかし国民の理解は得られると思います。あなたが改善していくために努力して取り組んでいることをとても嬉しく思います。今日は番組に出演して頂き、ありがとうございました。

S.アマルサイハン: ありがとうございました。

アマルサイハン * ジャルガルサイハン