B.ゲレルマー氏は、韓国科学技術院の数学と経営学を卒業しました。その後、フランスのヴェルサイユ大学でエコ・イノベーションマネジメントの修士号を取得しました。彼女は経済協力開発機構(OECD)と協力し、持続可能な開発、経済政策、金融、イノベーション及びコーポレートガバナンスに関する役職を歴任しました。2015年にアメリカでステップ社を創設しました。現在はブロックチェーン技術をモンゴルに導入するために活動しています。
J(ジャルガルサイハン): こんにちは。あなたのステップ社を紹介して下さい。
ゲレルマー: 私はカウントアナリストとして働くためにアメリカのニューヨーク市マンハッタンに行きました。当時、自分がしている仕事を他の人が代わりにやれること、特別ではないことに気づき始めていました。そして自分のやっている仕事が生涯を通して本当にしたいことだろうかと自分に問い掛けました。周囲にスタートアップビジネスを立ち上げる人も増え、私にビジネスの相談を持ちかける人が多かったので、これはニーズがあると感じました。そしてアメリカ人の友人と一緒に新しく出てきているスタートアップビジネスの市場を調査し、戦略アドバイスを提供するためにステップ社を創設しました。会社の名前に関して、私はモンゴル人なのでモンゴルらしいブランドにしたい、また大草原という意味でステップという名前を付けました。
J: あなたの会社はスタートアップビジネス市場、その中でイノベーションに関するアドバイスを提供しています。あなたはモンゴルで何をしたいと思っていますか?
ゲレルマー: 当社は一般的なコンサルティング会社と少し異なります。一般的なコンサルティング会社は技術的な解決法や成果として統計に基づいたプレゼンテーションや報告書を出して終わっています。当社の場合は必要に応じてプロトタイプやシステムデザインを出し、解決プロセスを教えています。また、当社と他社の最も異なる点は「統合イノベーション」です。アメリカの市場は非常に大きく、既に先行している同様なサービスを提供する企業の顧客を奪うことは非常に困難です。会社設立当初は新規顧客をネットワークを活用して集めていました。当社はIBM、ハーバード大学、スタンフォード大学、マサチューセッツ工科大学やカリフォルニア大学バークレー校などと共同研究をしています。基本的に各国の政策に応じて、どのようなシステムを作るのか、どんな工学技術を使うか、デザインを変更しながらソリューションを作成しています。
J: ブロックチェーンという技術はなぜ重要ですか?これについて説明して頂けますか?
ゲレルマー: ブロックチェーンはインターネットに次ぐ革命です。ブロックチェーンは2つの基本的な仕組みを統合した技術です。1つは「分散型取引台帳」で最も安全なものです。2つ目は、分散型取引台帳は「ハッシュ関数」というもので動きます。「ハッシュ関数」とは一方向のデータを生成する関数です。これはあるデータを入力すると256ビット長で暗号化された出力データとして出てきます。これは機密性能が最も高く、世界中に分散したブロックと言われるCPUが登録しているということです。
J: CPUとは何ですか?以前からあったものではないですか?
ゲレルマー: CPUはCentral Processing Unitという言葉の省略です。以前IPは簡単に侵入されていましたが、CPUに侵入するにはそれより100倍も速いコンピューターが必要です。IPによる通信をCPUに移しているということです。
J: どんなデータを入れてもハッシュ関数で暗号化されて出てきます。この暗号を外からみてどんな情報かを知ることができない。もし、侵入しようとすれば高速コンピューターが必要ということです。このように理解していいですか?
ゲレルマー: データの暗号(コード)を世界中に分散しているブロックに配信するには10分必要です。この10分の間に侵入すること自体は不可能ではありません。しかしこの場合、グーグルのコンピューターより100倍も高速なコンピューターがなければ侵入できません。このような高速なコンピューターが出てくる頃には、ブロックチェーンの次のIOTA(アイオータと呼ばれる仮想通貨)に使われるTangleという技術が開発されているので侵入は不可能です。
J: このブロックチェーン技術の実生活における必要性は何ですか?
ゲレルマー: 2人の人が社会的関係において付き合いする時は第三者が調整するようなことがあります。例えば、政府、モンゴル銀行、裁判所などです。しかし、第三者を通さずに2人が直接話せるシステムを作るためにこの技術が初めて開発されました。私たちは全てのデータを一ヵ所に集中させてしまうと何らかの形で情報が変えられたりする恐れがあります。
J: この技術の長所はデータを自動的に承認することができるので操作時間を短縮しています。
ゲレルマー: ブロックチェーン技術は世界中に広がっていて、機密性が最も高く、信頼できるインフラ技術です。ブロックチェーン技術に基づいた最初の活用は金融分野、つまりビットコインです。
J: ブロックチェーン技術を社会生活においてどのように利用しますか?例えば、入札や選挙などに利用できますか?
ゲレルマー: いくつかの国で選挙などに利用された事例があります。その一つはエストニア共和国です。エストニア共和国は1996年から電子政府システムに移行しました。しかし、データが集中していたため、不法侵入を受けた経験もあります。国全体のデータに侵入されたので、その対策が考えられていた2008年にブロックチェーン技術が開発され、彼らは正にこの技術を利用するべきだとみてブロックチェーン技術の導入を行いました。エストニア共和国は電子政府を進め、選挙や税金の払い戻しなど全てにブロックチェーン技術を利用しています。モンゴルの場合、選挙の投票に関するブラックボックスはソフトが付いた状態できているため、侵入される可能性が高いです。言い換えれば、集中システムをもっているということです。しかし、私たちはブロックチェーン技術を利用して電子投票をすれば、個人の電子番号、投票は絶対に変わらないので最も正当な選挙となります。
J: 私は少し前にエストニア共和国に行ったことがあります。エストニアの人々は選挙の時に携帯電話で電子投票をしていました。私は電子投票の時に不正が発生しないですか?と聞いた時にそれは不可能だと言っていました。モンゴルでは選挙は投票を審査する人、莫大な予算を使って行われています。しかし、エストニア共和国ではそんなことは一切ありませんでした。技術の進歩は世界の国々に今までにない新たな可能性をもたらしています。私たちはブロックチェーン技術を利用するためにどうするべきですか?
ゲレルマー: 何かをする時はタイミングというものがあります。モンゴルはブロックチェーン技術を利用して社会、経済、政府のシステムを改善させ、無駄なコスト(例えば、選挙のコスト)を減らし、その資金を別の必要なものに使えるようになる可能性があります。エストニア共和国の人口は150万人です。この技術を早く導入することができました。
J: エストニア共和国はこの技術を導入したことによって賄賂がなくなりました。アメリカのような大国ではブロックチェーン技術の導入と普及には時間がかかります。しかし、モンゴルのような市場が小さい国ではブロックチェーン技術の導入と普及は早く進むと思います。
ゲレルマー: 多くの人は小さい市場を短所として見がちです。一方、この小さい市場は変化がたやすく、効率的だと思います。「試行するのであれば最も安いコストで素早くやってみる。上手く行かなかったら次の手を打つ」という言葉があります。モンゴルはタイミングも条件も整っていると思います。他方、ブロックチェーン技術をロシアや中国など大国が導入を検討していれば他の国は危機感をもつ可能性があります。しかし、モンゴルの場合は、他の国が危機感を持つことはありません。逆に援助したいという風に受け取られます。
J: 援助を受ける他にモンゴルの大学生にこの技術について教えれば、彼らは自分たちのデータを世界に輸出する可能性も有るのではないでしょうか。これについてあなたはどう思いますか?
ゲレルマー: 当社は、モンゴルがブロックチェーン技術をどこまで利用できるかについて計画を短期・中期・長期に分けて作成しています。今のところ、計画が完成していないため公表していません。この計画には教育分野、金融政策、法的環境にどのように取り組んでいくかについて明確に反映させています。もし私たちが、本当に「電子国」となりたければ、技術を教育制度に取り入れる必要があります。そうすると多様な研修を実施する時など、必ずその国に行くのではなく、モンゴルで家に居ながら仕事をできる可能性があると思います。
J: 学校で教えるようになるまで何年かかると思いますか?
ゲレルマー: そんなにかからないと思います。例えば、プリンストン大学ではブロックチェーン技術のコースを開設しています。コンピューター科学を勉強している学生は一学期を通して受けます。また情報技術専門の人が希望して受けることもできます。私はモンゴルの情報技術分野に働く若者の能力は高いとみています。そのため、教育から始める必要があると思います。
J: 医療保険、銀行口座、子どもの登録などを電子化する可能性が出てきました。古いものを新しい技術に置き換える可能性が出てきています。
ゲレルマー: そうですね。電子国となるため、1人1人が自分が置かれている環境の中で正しい情報を得る必要があります。みんなブロックチェーン技術の利用で改革が行われていることを理解していても、どのように利用するかを分かっていません。当社は2018年からhttp://www.steppe.in/というウェブサイトに具体的な情報を載せる予定です。
J: http://www.steppe.in/※ウェブアドレスの最後はどうしてINですか?
ゲレルマー: 最近は技術分野に新しいドメインを開設することがトレンドになっています。アメリカでsteppe.comというドメインは既に取得されていたので、URLをINで終わるようにしました。もし、Steppeのpeがなかったら「Step in」つまり「足を踏み入れる」という意味になります。
ゲレルマー * ジャルガルサイハン
※ 現在のURLはhttps://steppe.group/となっています。