ラディーン・ガンジョール氏は、ロシア国立ウラル工科大学でエネルギー工学を修めました。その後、アメリカ、日本、韓国などの国で自分の専門性の向上に努めました。現在はモンゴル国エネルギー技術顧問も務めています。ラディーン・ガンジョール氏は、いままで第3火力発電所の主任エンジニア、エネルギー省専門技官、エネルギー規制委員会委員長を歴任しました。

J(ジャルガルサイハン): こんにちは。あなたは電気技師として長年の経験がおありですね。そしてウランバートルで現在も稼働している第3火力発電所で長く勤めてきました。また、モンゴル国エネルギー庁、エネルギー規制委員会のメンバーとしても長く勤めてきました。本日はモンゴルのエネルギー分野の現状について話を始めたいと思います。あなたは今日のエネルギー分野をどのように見ていますか?

ガンジョール: 今日のモンゴルのエネルギーシステムは、電力供給という視点で見ると十分ではありません。電力の供給能力が不足しているのです。モンゴルは国内電力消費量の20%を輸入に頼っています。言い換えれば、モンゴルのエネルギーシステムは、ロシアに依存している状況ということです。まずモンゴルのエネルギーシステムは、供給段階から信頼性が低いと理解してください。これは、モンゴルの主な発電所の建物や機械設備が老朽化していることが原因です。基本的に大規模発電所の寿命は40年と言われています。修繕などを繰り返しても、せいぜい60年が限度です。60年間、稼働していた発電所は停止させるべきなのです。

J: モンゴルにある発電所は建設からどのくらいの年月が経ちましたか?

ガンジョール: 第3発電所は稼働し始めてから51年、ダルハン市の発電所は54年、ドルノド県の発電所も50年、第4火力発電所は36年、エルデネトの火力発電所は30年になります。モンゴルで大規模とされる多くの発電所で寿命が切れる手前にあります。

次に、モンゴルのエネルギー分野は毎年、赤字経営となっています。エネルギー分野の負債は2018年に300億トゥグルグ、2019年に400億トゥグルグだったと言われています。つまり、エネルギー分野は経済的に危機的状況にあると言えるでしょう。

J: あなたはさきほど発電所には寿命があり、60年になれば停止すべきと言いました。そうするとモンゴルの主要な発電所は9年後には全て停止することになります。つまり、これほど大規模施設の停止期限が迫っているのに、その代わりとなる発電所の建設については少なくとも10年前から計画していなければなりません。これはどうなっていますか?いや、更に言うと、政府は第5発電所の建設について20年前から話し、起工式を10回も行いました。それが最終的に建設されることなく計画は白紙になりました。あなたはこれについてどう思いますか?

ガンジョール: そうですね。第5発電所の建設については、2000年から約20年近く話題になってきましたが、結局実現しませんでした。本来、どの国でもエネルギー分野は最初に発展させるべきものです。しかし、モンゴルの場合は先に発展するどころか、世界の水準から36年は遅れています。あなたが言うように、私たちは既存の発電所に置き換わる新しい発電所を建てなければなりません。モンゴルのエネルギー分野の発展を阻んだ例として、第5発電所は必ず建てられるべきものでしたが、決定権を持つ人たちが何かしらの理由をつけて何年も着工を延期させた末に計画そのものを消滅してしまいました。

J: そのことについて伺います。その理由は何だったのでしょうか?何か利害関係がありましたか?あなたの見解を聞かせて下さい。

ガンジョール: 正直に申し上げると、私は第5発電所の建設が実現されなかった理由は、決定権を持つ者たちによるものだと見ています。時の権力者の利害関係と関係していたと思います。決められた期限内に国にとって重要な施設の建設を一握りの権力者の様々な理由で先送りにして実現させなかった。その結果、国は厳しい状況に追い込まれています。私たちは第5発電所をはじめ、タバントルゴイの発電所も建設できていません。

既存の発電所が老朽化しており、電力供給は不安定な状況に置かれています。真冬にこれらの発電所が停止すればどうなるでしょうか。今日では第4火力発電所だけでモンゴルのエネルギーシステムが動いています。

J: この状況をどうすれば変えますか?

ガンジョール: モンゴル政府、特に3人の国のトップ(大統領、首相、国会議長)がエネルギー分野の現状に目を向けなければなりません。実際に第5発電所の建設は、担当大臣、政府実施エージェンシーの長官、市長のレベルで話されていたから進展しませんでした。もし、国のトップレベルで話され、トップダウンで指示が出ていたならば、第5発電所の建設は実現していたと思います。モンゴルのエネルギー分野は、国の中間レベルの人、つまり大臣や長官レベルでしか見られていません。これが大統領、首相、国会議長レベルで重要視されるようになるべきです。

最近では、U.フレルスフ首相が「私たちが取り組まなければならない3つの喫緊の課題の1つは、エネルギー問題とその独立である」とよく発言をしています。本当にそのように思っているならばとても良いことです。首相だけでなく大統領や国会議長もこの課題の解決に尽力しなければなりません。さもないと、モンゴルのエネルギー分野はより厳しい状況に追い込まれると思います。

J: モンゴルは電力消費量の20%をロシアから輸入しています。つまり、既存の発電所では100%自給できないということです。例えば、ウランバートルの発電所がフル稼働している状況では、ちょっとした問題が発生しただけでウランバートルの市民は凍える危険がありますよね?

ガンジョール: それは十分にあります。2018年9月に第4火力発電所に問題が発生したときは、ウランバートルの中心地区全体が3時間の停電になりました。これが真冬に起きれば完全に凍えてしまいます。これをみても、モンゴルのエネルギー分野全体が、特に発電所は危険性の高い中で稼働していると言えるでしょう。

J: 政府はこの事案を受け、どのように分析を行ったのでしょうか?第4火力発電所が3時間停止した原因は何だったのでしょうか?

ガンジョール: 当時、これは発電所従業員の過失によるものだったと大臣や長官が分析結果を公表していました。しかし、私はモンゴルのエネルギー分野における機械設備の老朽化や技術の遅れによるものだと見ています。今日、発電所が個人の責任において動いているということはあってはならないことです。今は21世紀です。21世紀では、私たちは最先端の技術を用い、全ての機械設備を自動化し、人間のミスを省いた発電所を建てなければなりません。

現在、モンゴルのエネルギー分野には3,000人のエンジニア、13,000人の労働者が働いています。彼らは機械設備の老朽化や遅れにも関わらず、朝から晩まで一生懸命に働いています。彼らのおかげで私たちは凍死せず、暖かい部屋で生活を送ることができていると思います。

J: そのとおりだと思います。では、次にエネルギー分野の債務超過について話しましょう。現在、モンゴルでは炭鉱と発電所は負債をもっています。それで政府に毎年予算を要求しています。エネルギー分野の債務超過の原因は何ですか?

ガンジョール: 主な原因は、現実的な価格設定ができていないことにあります。エネルギー規制委員会の調査によれば、現在の電力の平均売価では20%の赤字になるとされています。電力価格を現実に近い数字で設定しようとすると、社会全体から大きな反発を受けてしまいます。これもモンゴルの社会問題に関係しています。現在、モンゴル人の3人に1人が貧困にあります。この状況を政治家たちが利用し、選挙の時には電力価格を引き上げるべきではないと言います。だから、エネルギー分野はこのような好ましくない経営環境から脱却できずにいます。それでもエネルギー規制委員会はできる限り努力し、電力価格を少しでも引き上げることにつなげることができました。例えば、欧米諸国では工場や企業の電力価格は安く、一般家庭の電力価格は高く設定されています。企業と一般家庭の消費電力の割合は、一般家庭が40〜45%、企業が55〜60%です。モンゴルの場合、電力収入全体の30%を一般家庭、工場や企業が70%を占めています。先ほども言ったように、モンゴル人の30%が貧困であり、その人たちを守るために電力価格が低く抑えられています。つまり、この30%のせいで、料金を支払うことができる全ての企業、世帯の電力価格が低く設定されているということです。これは非常に良くありません。そのため、消費者を次の5つに分類していくべきだと思います。

第1グループとして、金、銅、石炭、蛍石、ウール、カシミアなど輸出製品を生産している工場。彼らは外貨で取引をしているので料金を支払う能力があります。だから彼らの電力価格を実際あるべき価格に設定するべきです。

第2グループとして、酒、ビール、たばこ、ホテル、カラオケ、レストラン、カフェなど嗜好品やサービスを提供している企業。彼らも支払い能力があります。これも実際の価格を提示すべきです。

第3グループとして、政府行政機関です。これも実際の価格を提示すべきです。

第4グループとして、中小企業です。彼らのビジネスはインフレや為替レート、債務などの要因によって厳しい状況にあります。彼らに提示する電力価格は今のままでよいと思います。

第5グループとして、一般家庭です。彼らに提示する電力価格も今のままでよいと思います。

しかしながら、中には「電力価格を引き上げても構わない。私たちは支払います。その代わりに電力供給を安定させてほしい」という声もあります。こういった声はザイサン地区、マーシャル・タウン、ジャパン・タウンなどの高級住宅街の消費者です。

J: 地域での電力価格に関して諸外国の事例を見ると、固定資産税を地価で定めています。地価とは土地1㎡の取引価格で定めています。例えば、モンゴルのザイサン地区での地価はとても高いです。そういった地区の固定資産税は2%を徴収するべきです。徴収した税金でその地区の開発を進めていけば、本当の意味での高級住宅街になります。ところが、今のザイサン地区では家の前では車が通り抜けられない状況です。それなのに地価が高いです。これはガバナンスに関係している問題でもあります。一部の人が建築許可を出してはいけない場所に許可を出し、そこにマンションを建て、高値で販売し、儲けています。住宅を売りさえすれば、後のことは関係ないという感じです。実際に資金を出して住宅を買った人たちが損をしているような状況です。本来、ザイサン地区は観光地として建築許可が降りるべきところです。

ウランバートル市内にある土地の固定資産税を地価で定め、適切な税金を徴収する仕組みを作る必要があります。例えば、モンゴルの政府庁舎は固定資産税を支払う仕組みがありません。これは最大の間違いです。これは徴収しなければなりません。他方、ゲル地区の地価は低い。このゲル地区世帯には今の電力価格を下回る価格を提示してもよいでしょう。しかし、ウランバートル市南部のザイサン地区やボグド山周辺の世帯の電力価格は引き上げるべきです。これを実施する機関は、法的にはエネルギー規制委員会です。この委員会はなぜ、これを実行しないのですか?

ガンジョール: エネルギー規制委員会は対応すると思います。私はエネルギー規制委員会の委員長を務めていた時、この電力価格設定について初級段階の調査を進めたことがあります。しかし、私は2009年にその役職を解任されました。それ以降、エネルギー規制委員会の委員長は4度も変わりました。つまり、この委員会に政治が絡むようになってから上手く行かなくなっている現実があります。

J: 私たちはエネルギー法を改正し、そこで電力の生産者である発電所、送配電事業者など縦に区分しました。ここで発電所の独占を防ぐために、民間発電所の設置というものを盛り込まなかった。盛り込んだとしても現在の電力価格では民間企業が参入できません。価格を自由化すればモンゴルの電力は安定します。例えば、民間企業が発電所を作り、消費者に電力を供給します。消費者が供給先を選ぶために、消費者にどのような選択肢があるべきですか?

ガンジョール: そのためには競争が必要です。この間、エネルギー規制委員会の関係者と会った時にこの件について話しました。現在、エネルギー規制委員会も電力供給において競争が生まれるように取り組んでいると聞きました。しかし、モンゴルにある電力会社はすべて100%国有企業となっています。単に発電事業者、配電事業者、送電事業者に分けるのではなく、所有形態を変えるべきです。例えば、国有電力会社の株式の51%を政府が保有し、残りの49%を民間企業が保有するようにすべきです。

J: そのとおりですね。本日は番組に出演して頂き、ありがとうございました。

ガンジョール: ありがとうございました。

ガンジョール * ジャルガルサイハン