多くの世界の国々では、大統領の年齢制限、任期、再任の可否や回数などについて憲法で明確に定めている。しかし多くの大統領は、一生涯、大統領というその玉座に座り続けることを望み、そのための様々な方法を模索するものだ。
最も一般的かつ典型的な方法は、国民投票を実施し、憲法の大統領に関する条文を自分に有利となるように改正することである。例えば、大統領の再任に関する規定を廃止したり、任期を長期化したりといったことだ。他にも、社会情勢が変わったからという理由で大統領選挙に再立候補することができるようにすることもある。
1人の人間が政権のトップの座に数十年、もしくは一生涯居座り続ける時、そこにはどのような問題が起きるのか?なぜ大統領の任期は決まっているのだろうか?
死ぬまで大統領でいつづける
最近の事例は、モンゴルと隣接するロシアと中国が挙げられる。昨年、ロシアと中国は自国の憲法を改正し、国家元首がその権力を生涯にわたって保持することが法律で保障されるようになった。
2020年、ロシアは国民投票によって憲法を改正し、ウラジーミル・プーチン大統領は2036年まで、つまり彼が84歳になるまで36年間大統領職にとどまることを可能にした。今後の大統領選挙ではそれまでの任期や多選を勘案しなくなったため、彼は2024年の大統領選挙に出馬できることを法律で定めた。また、大統領は生涯にわたり免責を得ることになった。ロシアのそれまでの国家元首の在位記録は、30年間権力の座に就いたヨシフ・スターリンだった。
中国共産党中央委員会は、1980年から施行してきた国家主席の任期を2期までとする憲法の条文を削除する改正を行った。この改正によって、2013年に国家主席になった現在67歳の習近平国家主席は、生涯にわたり国家主席の座にとどまることが可能となった。中国のそれまでの記録は、33年間権力を握った最高指導者毛沢東である。
モンゴルは2020年の憲法改正で、大統領の任期をそれまでの1期4年で2期までから、1期6年に変更した。しかし、現大統領が2021年の夏に行われる大統領選挙に出馬できるのか否かについては、社会全体で多くの議論が繰り広げられている。モンゴルの国家元首の在任記録は、44年間権力の座にあったユムジャー・ツェデンバル元帥である。
アゼルバイジャンでは大統領は世襲制で、アリエフ大統領と彼の妻がどのようにしてあらゆる権力を握ってきたについてはこちらの過去の記事を読んでいただきたい。
先週、ウガンダ共和国で大統領選挙が行われた。人口4,200万人のこの国を1986年から継続して35年間指導してきた現職のヨウェリ・ムセベニ大統領(76歳)が58.8%の票を獲得し当選した。対立候補の歌手のボビ・ワイン氏(38歳)は、34.2%の票を獲得した。
ボビ・ワイン氏は「選挙結果を認めない、私たちが圧勝した」と主張し、投票用紙を事前に記入して投票箱を封印した、野党支持派に暴力をふるい投票場から追い出したなどの選挙の不正を批判した。これらの不正行為はインターネットへの接続が回復すれば公表すると言っている。
選挙運動時にウガンダ政府は、野党に圧力をかけ、野党支持派を拘束し、メディアへの弾圧が行われた。それに対する抗議により少なくとも54人が死亡した。さらに投票が行われる3日前から全土でインターネット回線を遮断した。新型コロナウイルス感染防止のためという理由を付け、国民に外出制限を徹底させた。選挙結果に関連する集会などを行わせないようにするためであり、軍と警察が街中をパトロールした。
ムセベニ大統領は、過去に2回も国民投票を行い、憲法を改正した。これにより大統領の制限のない多選を可能にし、それまでの75歳という年齢制限を廃止した。
このウガンダ共和国と同じケースが、ルワンダ、トーゴ、ガボン、チャド、カメルーン、コンゴ共和国、スーダン、エリトリア国、コンゴ民主共和国など、多くのアフリカの国々で見られる。唯一、南アフリカ共和国のネルソン・マンデラ大統領だけが約束どおり1期のみ大統領となり、国民からは熱烈な再選要求があったが、再び大統領選に出ることはなかった。
1人による長期政権の原因とその結果
国家元首が権力にしがみつく主な理由は、自分が犯した罪で処罰を受けないため、それまでに得た財産を維持するため、そして敵から復讐されることの恐怖が関係している。
物事には順序がある。長期政権を維持してきた指導者は、いつか権力の座から降りる。少数の指導者は、正当なやりかたで、つまり選挙によって選ばれた人物に政権を委譲する。もしくは自発的に辞任する。しかしながら多くの指導者は、革命やクーデター、暴動などにより捕まり、強制的に権力の座から引きずり降ろされる。
調査によれば、権力の座に長くいればいるほど、その座から強制的に降ろされる可能性が高まるという。つまり、権力の座にしがみつく時間が長ければ長いほど、彼らは平和の中で歳を取る機会を失うということだ。生涯にわたり政権を握ってきた者がどのようにしてその座を離れるかは、政権交代が起きるまで行ってきた失敗の数で決まる。もし、「ターニングポイント」を見過ごしていれば、その者には正当に権力の座を離れる機会はない。
唯一人による長期政権が続けば続くほど、彼に代わる他の独裁者が現れる可能性がとても高くなる。その理由は、長期政権を維持した者は、政界からすべてのライバルを完全に追放してしまうからだ。そのため、有力なライバルは出て来なくなる。これはまた、その社会が彼に長期にわたり支配することを認めているということである。このような状況に陥る主な原因は、その国の政治家が市民社会に恐怖を植え付け、支配できるようにしたことにある。
永遠の大統領によって長年確立されたシステムでは、すべての決定は大統領の意思によってのみ出される。国家権力はすべて大統領だけに集中してしまう。そのため政府機関は垂直管理となり、責任を恐れ誰もが何に対しても責任を負うことから逃げる習慣が定着する。
そして国民は、時間が経つにつれて自分たちには何もできないということを完全に信じてしまう。既にこのように確立されたガバナンス・モデルを完全に改革するには、長い時間が必要である。なぜならば、社会全体が成熟することを待たなければならないからだ。
大統領の職に任期を設けるということは、大統領の政府が国家権力の分立を崩壊させる可能性を抑制し、在任期間中に公約を果たすことに集中するという良い歴史、習慣を残すことである。
また大統領の任期が決まっていることは、国家権力を次の人物に移すことが正当かつ当然のこととなる。また、ライバルがクーデターや暴動を起こして政権を完全に崩壊させる危険を生じさせないという利点がある。さらに大統領の任期は、次世代の政治指導者を育成し、新しいアイディア、新しい政策を醸成する環境整備に繋がる。たとえ最も偉大で、最も影響力があり、最も有名な人物であったとしても、永遠の指導者とはならない。
ダムバダルジャー・ジャルガルサイハン