モンゴルが民主主義の道を歩み始めて30年、国民は国の発展における政党の重要性にますます気づき始めた。民主主義の下で行われる選挙では、最大の票を獲得した政党が政権を握るようになる。政党は立法権において多数の議席を獲得し、党首は行政権のトップとなる。

政党内部に民主主義がなければ、政党に所属する国会議員は、国家の民主主義の確立にどのように貢献できるだろうか。そのため、政党の内部民主主義がどの水準にあるのかを測定し何を改善するべきかを、政党だけでなく社会が知ることが重要である。

このような状況を考慮して、政党の開放性、透明性、説明責任を高めるために、政策研究を行うデファクト研究所は「モンゴルの政党内部民主主義の指数」を2018年以来、毎年発表している。

政党の内部民主主義の評価

この調査では、国会に議席がある、もしくは有権者をある程度代表できる政党(有権者全体の10%以上の票を獲得した「関係当事者の政党(relevant parties)」)が対象となっている。具体的には、国会に議席をもつ人民党、民主党、人民革命党、全国労働党の4党である。

この政党の内部民主主義の指数は、政党の党則の内容や実際の実施状況を評価している。党員の参加、競争、代表、透明性といった4つの主要因で、0〜100点満点の点数をつけて評価する。そして、合計点数が30点未満であれば「民主主義ではない」、31〜60点は「半民主主義」、61〜100点は「民主主義である」に分類している。

調査チームは、各政党の党員にインタビューを実施した。そして伝統的なメディアおよびソーシャルメディアで報道された関連情報から、各政党の内部民主主義に関係するものを収集した。最後に4つの主要因(党員の参加、競争、代表、透明性)に関連したアンケートに研究者等が回答し、評価した。

2020年にはモンゴルの国政選挙が行われたため、政党の内部民主主義の指数を評価するにあたり多くのデータを集めることができた。選挙運動で公表された政治活動プログラムの作成、候補者の選定、大小会議の開催など、各政党の活動が急激に活性化していた。この調査は2020年10月〜12月の間に行われた。

今日の政党の内部民主主義

政党の内部民主主義の指数2020年では、全国労働党が69.7点でトップとなり、次いで民主党:58点、人民革命党:57.5点、与党人民党は54点で最下位(図1)となった。全国労働党のみが「民主主義である」カテゴリーに入り、他の3党は「半民主主義」のカテゴリーに分類された。基本的に各政党の点数はそれほど大差がなく、政党の内部民主主義は不十分といえる。

2019年に人民党以外の3党は60点以上の点数を獲得していた。今年は3つの政党の点数が下がり、「半民主主義」カテゴリーに入った。選挙時の候補者の選定で党則に違反した、党幹部の影響力が大きかったなど、政党の内部民主主義に悪影響を与えたという事例が多かったことが、調査のインタビューで明らかになった。与党人民党の幹部の活動は、党員に対してより一層閉鎖的になったと評価された。

内部民主主義がある政党の場合は、選挙候補者の選定、党首の選出、政治活動プログラム作成などの主な決定を出す際に党員が参加している。しかし、内部民主主義がない政党の場合は、いかなる決定も党内のごく少数の党員、党首によって出されている。モンゴルの政党は、有権者だけでなく党員に対してさえも説明責任を果たしていない。これは閉鎖的で、限られた人たちのクラブのように活動している。

図1.政党の内部民主主義の指数2020
図1.政党の内部民主主義の指数2020

政党の内部民主主義の動態

過去3年の指数をみると、内部民主主義は全国労働党の指数は継続的に上昇している。しかし、他の3党の場合は低下している(図2)。全国労働党は他の政党に比べて最近誕生した政党であるため、他の3党に比べると構成する党員が少なく、政党として成長の初期段階を歩んでいるといえる。党員が少ない党、又は党則や組織化が整っている党では内部民主主義が高い可能性がある。今回の評価は選挙後に行われたため、内部民主主義に関する情報は比較的に正確だったと見ている。

図2.モンゴルの政党の内部民主主義の指数、2018-2020年
図2.モンゴルの政党の内部民主主義の指数、2018-2020年

また今年の調査では、政党内部で意思決定段階における若者や女性の参加及び代表者数も詳細に調査した。2020年の国政選挙で当選した40歳未満の国会議員は7.9%(6人)だった。また過去2回の国政選挙では、国会議員76人のうち13人(17.1%)が女性であった。モンゴルの女性国会議員のこの割合は、世界およびアジアの平均より低くなっている。昨年の時点での女性国会議員の割合は、世界平均で25.1%となっており、内閣閣僚については20.7%となっている。

モンゴルの政治における女性参加は、政党の一般党員および党の中間幹部では高いが、上層部では不十分かつ低い。党上層部への女性の参加を妨害している最大の障壁は資金である。例えば、民主党は前回の選挙の時に、各候補者へ1億トゥグルグの資金を要求した。女性の候補者は6,000万トゥグルグとなってはいるが、彼女たちにとってこれは持ち上げることのできない大きな石塊となった。女性のみならず若者にとってもこれは同様であり、政党の上層部に行くために必要となる資金は最大の障壁となっている。

世界的に見ても、若者や女性の政治への参加を促し、政治の意思決定の段階にも彼らが参加できるようにするためのもっとも効果的な組織は政党である。モンゴルの政党は、若者、女性のためにクォータ(割当)を決めている。しかし、2020年にモンゴルの若者を対象に共和党国際研究所(IRI)が行った調査では、政党こそが若者にとって最も不利となる組織であることがわかった。すなわち、モンゴルの政党の価値観、活動はまったく若者には届いていないということだ。

政党の内部民主主義を発展させるためには、政党が積極的に若者や女性へ働きかけることが重要な役割を果たす。また、市民社会も政党へ圧力をかけるべきである。なぜならば、国民に代わって国の決定を出す代表者は、国民の過半数の票で選ばれている。その彼らが適切に国家権力を行使しているか否か、すべての国民が関心をもつべき問題であるからだ。

ダムバダルジャー・ジャルガルサイハン