国政選挙2020

選挙制度とは、人類の数百年の歴史における発展と競争の結果である。古代ギリシャ、インド、ローマでは社会の問題を様々な形態の選挙によって解決していたという。しかし、現代の代議制民主主義選挙は1695年に初めてイギリスで行われた。当時の選挙で政権を取得するという目標を持った、1670年代に設立されたホイッグ党(The Whigs)とトーリー党(The Tories)という2つの政党(party)が参加した。

人類は所有財産、資産、性別を問わず市民が参政権を得たのは、僅か100年前のことだ。それまでは財産を持つ者や納税者のみが議会に代表者を推薦し、選択されていた。イギリスの歴史を見ると、有権者がいないのに議会に代表者がいる腐敗選挙区(Rotten Boroughs)が出て来ていた。オールド・セーラムという地域では、有権者がたった7人にもかかわらず議会に代表議員を2人も選出していた。これはイギリスの歴史に残る、最も有名な事例である。

多くの国で国民は絶え間なく戦い、想像を絶する困難を乗り越え、政権を市民が選択する参政権を手に入れてきた。モンゴル国民も同様に、先人たちの数百年の戦いの結果この権利を獲得できた。私たちは権利や自由など、重要な価値を維持し、保護するためにトーマス・ジェファーソンの言った「永遠の警戒が自由の代価」を忘れてはならない。

警戒するもの

投票を買収する試み:政権を握っている権力者たちは、選挙前になると選挙区の住民(特に高齢者に)へ贈り物を配ることが慣例化した。野党もこれに追従するようになった。コップや皿などの食器をはじめ、小麦粉、米まで国民の生活に必要なもので、なんと「政治家の贈物/プレゼント」と名付けられた展示会まで開催されていた。政治家が贈物の他に現金を配るという“汚い行為”を行っていたことは、有権者も記憶に新しいだろう。“無料”という名のチーズは仕掛けられた罠の餌である。

フェイクニュース:以前は国民が得られる情報源は国有、民間テレビ局、ラジオ、新聞など伝統的な手段のみだった。しかし、今日はソーシャルメディアが発展し、一般市民自らが情報源になっている。情報は1つではなく、多岐にわたるようになった。情報は国の発展に必要不可欠であり、その中でも民主主義の1つの大きな手段である。しかし、ソーシャルメディアというこの強力な手段を、選挙時に民主主義の敵たちはフェイクニュースの武器として利用するようになった。偽の情報については「密事、誤報、偽情報がもたらす害悪」に詳しい。

選挙の投票数:今日、人類は「新型コロナウイルス感染症」という重大な試練に直面している。市民の集会やイベントなどが禁止されているため、政党、立候補者たちは選挙宣伝活動にマスコミ、特にソーシャルメディアを主に利用する他に選択肢がない状況となった。 3ヵ月前、フランスの地方選挙での投票率は有権者のたった45.5%だった。これは歴史的に少ない投票率となった。国政選挙での投票率が低ければ、内閣の承認に悪影響を与えることになる。モンゴルの前回の国政選挙の投票について見れば、18〜25歳の若者の投票率が最も低かった。

モンゴルの有権者全体の3分の1が30歳以下の若年層であるにも関わらず、投票したのはその世代の僅か半数だったことが注目すべき点である。それに対して50歳以上の年齢層では約全員が投票している。これは若者ではなく高齢者が決定を出しているということである。そのため、若者や高齢者のニーズは異なっているにも関わらず、政府は「雇用」より「手当」を主柱に政策を打ち出している。これは何も驚くべきことではない。なぜ若者ではなく、高齢者のローン返済をゼロにしたかを若者たちは果たして理解しているのだろうか?若者が投票しなければ、若者に代わって高齢者が投票する。投票をしなかった者は、船に乗り遅れ、岸に残されることになる。

投票とは責任

選挙は憲法で保障された国民が持っている重要な権利の1つである。しかし、この権利や自由の裏側には常に義務と責任がある。自由と責任はコインの裏表と言われる。そのため、世界27ヵ国では義務投票制(Compulsory Voting)という、有権者が選挙に投票することを法律で義務付けられている。これは実際に一部の国で施行されている法律である。投票しなければ罰金を科されるなど、個人の責任が追及される。例えば、オーストラリアでは選挙に投票していない人は、1回目は20ドル、2回目からは50ドルの罰金を払うことになっている。もし、罰金を支払っていない、もしくは投票しないことが再三ある場合は、運転免許証まで無効にされるほど厳しいものだ。

投票しようにも選ぶ候補者がいないという場合、その意志を表明できる機会が投票用紙にある。投票用紙に候補者の名前を書かずに投票箱に入れるのだ。モンゴルではそれを「白い選択(白票を投じるという意味)」と言われるようになった。有権者なら誰もが、必ず選挙で投票しなくてはならない。投票しなければ責任を追及するとまでは言うまい。しかし、あなたの一票がなければ、どれだけ膨大な損害を受けるかを理解しなければならい。なぜならば、最も非道徳的で無知な者たちが再び4年も国を指導し、あなたの生活や支払いに影響する決定を下すことになるからだ。彼らはあなたの所得から強制的に税金を徴収し、そのお金で高級車に乗ることを、あなた自身が許してしまうことになる。

どのように選択するか?

選挙では、得票結果に基づき最終的に政党のみが政権を取る。これは権力を行使する上で、政党であることは最も重要な条件である。また、候補者を選ぶ際には顔や体形がカッコイイ、綺麗という理由で選択すべきではない。最も強い誰か、最も美しい誰かを選ぶミスコンではないということを考えなければならない。外見と中身は常に一致するものではないからだ。国政選挙では、全国民を代表して法律を立案することができる人物だけを選ぶことだ。ここであなたが投票する前に、立候補者に最低限次の3つの質問をするといい。

  1. 選挙の個人宣伝の資金を透明に、誠実に報告することができるか(実際にいつ、どこで確認できるか)?政党に対しても資金について透明性と正義感をもって報告するように要求できるか?
  2. あなたが当選後、議員になった時にあなたの兄弟、親戚は公職に就くことはない、あなたと関係している企業が中小企業開発基金から資金を受けることはないとを保証できるか?
  3. 貧困など社会における不平等を削減するために、あなたは何をどのようにするつもりか?

今回の選挙で、あなたの選挙区で立候補する人が何をするか?もしくは何をしたかを聞いてみることをすすめる。その理由は、法律は1つの選挙区ではなく、すべての選挙区で平等に機能するものであるからだ。つまり、あなたがいる選挙区に何を建てるのかは、選挙区から選出される議員ではなく政府が決める。またあなたの選挙区にいる議員が大臣になる可能性は、憲法改正で5分の1に下がった。もし大臣になったとしても選挙区のプロジェクトを実施することができなくなった。その上で、立候補者は選挙区民のために何ができるかを聞いてみるといいだろう。

全てのモンゴル国民、若者たち、今こそ自分に与えられている権利を行使する時である。

ダムバダルジャー・ジャルガルサイハン