O.オドゲレル氏はモンゴル技術大学をデザイナーとして卒業しました。ハンガリーの技術大学に留学した経験があります。情報取集、芸術マネジメント、芸術教育、イノベーションマネジメントなどを中心にハンガリーの首都ブダペスト、オーストリアのザルツブルグ、フランスのパリ、マレーシアのクアラルンプール、韓国ソウル、シンガポールなどの国で研修を受け、その専門性を向上してきました。2003年にモンゴル芸術委員会に初のデザイナーとして務め、2016年から同委員会の会長に就任しました。

J(ジャルガルサイハン): あなたはどうして芸術界の人間になりましたか?これについて話を聞かせてください。
オドゲレル: 私と芸術委員会との繋がりはダワースレンという親戚のお姉さんと関係があります。私はモンゴル芸術委員会で仕事をする以前、ソロス・ファンド・マネジメントに勤めていました。モンゴル芸術委員会は当初、ソロス・ファンド・マネジメントの文化芸術プログラムでした。2002年にNGO芸術委員会として設立され、ソロス・ファンド・マネジメントから独立し、従業員を募集していた時期でした。その時、ダワースレンさんから誘いがあり、当時の委員会会長アリオナーさんの面接を受けました。まず一ヵ月ボランティアとして入り、それから15年になります。なぜ芸術委員会から離れず居続けたかというと、当時の私はちょうど「自分探し」をしていました。今はその時に芸術委員会と出会い、私の人生のスタートを切ったことを良かったと思っています。そういう意味で私自身は芸術委員会の中で成長したと思います。芸術委員会がソロス・ファンド・マネジメントのプログラムだった時から、プログラムのコーディネーターから始め、現在の委員会会長職まで勤めてきたので、職歴を書くときに色々なことを書く必要はありません(笑。

J: あなたが毎日しているこの仕事は、社会にどの様な変化をもたらしていると思いますか?
オドゲレル: 人としての成長及び社会や経済の発展における文化芸術の影響を私たち委員会は昔からみてきました。初のNGO芸術委員会としてのプロジェクト活動で、芸術教育を通して個人を成長させ、創造性豊かな人間を形成することができるということを私たちは広く社会に伝えていました。私たちは2004年に芸術は才能ある人材のみを作り上げるものだという偏見を退け、芸術は社会発展や人間形成、文化遺産の保護などに多大な役割を果たすものであるということを公に認識させるため、様々なプログラムやプロジェクトを実施しました。

J: 芸術自体が人間の一部なのですね。このことを社会全体に理解させるために何をしなければなりませんか?
オドゲレル: 民主主義社会になってから人々が自分の想像力を活かす自由、芸術家が自由な発想で創作活動をできるようになりました。しかし残念ながら自由や開かれた状況に伴い多くの偏見が生まれました。芸術委員会はいくつかのプログラムを実施しましたが、ノンフォーマル学習を学校と連携して実施していくには力不足でした。私たちは芸術について肯定的な理解を社会に定着させるため、大きなフェスティバルを主催してきました。「私は誰なのか?これは何なのか?」「虹色の馬」などの子ども向け芸術教育フェスティバルをスフバートル広場で開催しました。政府や社会、個人の芸術への理解が乏しかったので私たちは一定の距離をとったプロジェクトを始めました。よくプロジェクト活動を全て自分たちで考えて出したものです。21世紀の若者には自己実現と創造力は重要なものです。だから読書や友だちとの交流、部活動と同じく芸術を道具にして、18歳未満の子どもに芸術の基礎を教える世界基準に適合した芸術教育を提供するプログラムの実施を始めています。

J: 芸術教育プログラムをどの芸術分野で実施していますか?図画工作ですか?音楽ですか?
オドゲレル: 基本的に図画工作や音楽、舞踊を通して実施しています。なぜならば、この3つは互いに関連性があるからです。例えば、幼児や学齢児童は音楽を聴いて感じたことを舞踊で表現できるようになると、プログラムは非常に効果的なものになります。

J: 先進国では美術教育というものがあります。モンゴルではどうですか?
オドゲレル: 殆どの博物館には芸術教育プログラムがあります。博物館の芸術教育プログラムでは、博物館の周辺だけでなく遠隔地の学校の児童生徒も博物館を見学できるようになっています。これはモンゴルの教育文化科学スポーツ省が実施した大規模なプログラムの1つです。

J: ウランバートル市の拡張につれて、すべての学校においてアクセスが可能となることを考えなければならなくなっています。皆さんは活動の中でこれをどのように見ていますか?
オドゲレル: そうですね。今、私たちが計画しているもう一つのプロジェクトについて話したいと思います。このプロジェクトはゲル地区、つまり遠隔地の児童生徒にクラシック音楽を教えるプロジェクトです。プロジェクトは2018年に始まります。このプロジェクト活動の一環として遠隔地で若いクラシック音楽家や楽団の野外コンサートの主催を計画しています。主催に当たってその遠隔地のソーシャルワーカーと協力します。

J: 皆さんの活動と同様なもので「ベネズエラ・エル・システマ」という組織があります。ベネズエラの著名な経済学者が30年前にゴミ処分場に住んでいた子どもたちを毎週日曜に自宅に集め、食事を与え、シャワーを浴びさせ、服を着替えさせ、楽器を見せながらクラシック音楽を教えていました。子どもたちが何度か来た際「あなたはどれか楽器を弾いてみたいですか?」と尋ねました。すると子どもたちはこの楽器を弾いてみたいと言うようになったそうです。その子どもたちを集めエル・システマという団体を設立しました。この団体は音楽教育を通して社会運動をしていたため、貧困地区が変わったと言い伝えられています。今ではこの音楽教育プログラムが世界中に広まり、この活動の中から世界でも有名な3人のオーケストラ指揮者が生まれたことをアメリカ、マサチューセッツ州ボストン市のニューイングランド音楽院の指揮者マーク・チャーチルと言う人が私の番組で語っていました。その後、モンゴルのオーケストラのある指揮者もこのような運動をモンゴルでしたいと話していました。大切なのは芸術を通して人々の生活に良い影響を与えるということです。あなたは芸術委員会のこれからの15年をどのように見ていますか?
オドゲレル: これからの15年を私たちは非常に肯定的にみています。モンゴルの発展に文化芸術がもたらす貢献は非常に大きいと思います。言い換えれば私たちにはするべきことがたくさんあるということです。先ほども言ったように、人間の成長や社会の発展における文化芸術の影響を広げることや、最新の機械技術を文化芸術の全ての分野と結び付けた新しいアイディアを出すこと、世界とモンゴルを繋ぐ文化芸術の交流を観光分野にも広げて行きたいと思います。文化芸術のみではなく、経済や社会、人間の発達、持続可能な発展を目標にしたプログラムを実施することにより、人々の芸術文化への理解が深まり私たちと協力できる場も増えると思います。これからの15年は芸術委員会単独ではなく、あらゆる分野の人々と共に協力していけば、多くの人が芸術を理解できるようになると思います。

オドゲレル * ジャルガルサイハン