8回目となる民主主義体制での国政選挙は2020年6月24日に投票日を迎える。モンゴル国民や政党、立候補者たちは選挙の熱狂に囚われ、選挙が終わっても人生が続くことを忘れているようだ。6月24日には605人の立候補者の中から76人が当選し、新たに国会議員となる。落選した現職議員たちは一般の市民となり議員特権を失うため、一部の者は逮捕され裁判所に送られるだろう(送られるべきだ)。

当選した議員たちは国への奉仕を宣誓し、そして首相が選ばれる。新しい内閣が発足する。では、新政権にどのような試練が訪れるのか?

黒死病の厳しい現実

今日、新型コロナウイルスが世界中を覆い尽くしているため、世界経済の血流が止まっている。黒死病が広がったように、各家庭を始め企業が受けた被害は日に日に増している。過去20年で減少し続けてきた極貧(Extreme Poverty)が今年また増え始めたと、この厳しい状況を世界銀行(2020年)が分析した。

モンゴル経済は今年の第1四半期で前年同期比10.7%縮小した。鉱業収入が30%減少したことが主な要因となった(国家統計局、2020年)。モンゴルの輸出の90%は中国に依存している。その中国の経済成長率は、過去40年で最低を記録し、今年の経済成長率は僅か1%になるという。モンゴル経済はマイナス0.5%になると世界銀行が予測している。

世界各国は、この危機による経済損失を軽減するため、今までになかった多額の経済対策を実施し始めている。例えば、ドイツは国内総生産(GDP)の33%、日本21%、フランス15%、イギリス15%、アメリカ合衆国12%に相当する規模の経済支援策を行う。

西欧諸国の経済活性化を図る包括的な取り組みは4兆ドルに上る。経済学者たちは、過去80年で最大の経済危機が訪れる恐れがあると警鐘を鳴らし始めている。世界各国が打ち出している経済対策の合計金額は10兆ドルを超えている。これは2008年の金融危機対策の金額の3倍以上となる。

国内外の負債

コロナ危機に続き、大規模な負債の返済期日が次々と迫って来ている。今日、モンゴルの対外債務総額は304億ドルに達している。このうち政府負債は72億ドルであり、これはGDPの60%を超えている。例えば、モンゴル銀行(中央銀行)は今年、中国人民銀行にスワップ取引の120億元を返済しなくてはならない。

モンゴル政府は2021年にマザーライ債券の6億ドル、2022年にチンギス債券の10億ドル、2023年にゲレゲ債券の8億ドル、2024年にフラルダイ債券の6億ドルなど、総額30億ドル規模の国債の償還、これにモンゴル銀行の25億ドルを加えれば、合わせて55億ドルの借金返済を行わなければならない。

対外債務の返済期日が迫っているこの状況では、政治家たちは選挙時の公約のための歳出を止め、財政赤字を削減するために大きな投資をすることが必要になる。もしモンゴルが輸出する鉱物資源の価格が急落すれば、通貨トゥグルグの価値は弱まり、財政赤字が更に膨張するリスクがある。この危機から脱出するためには予算を増額する必要があるが、そのような余力はかなり絞られるだろう。

何をするか?

新型コロナウイルスによる経済危機は長期化することが明らかになった。モンゴル政府が講じた5兆1千億トゥグルグの対策プログラムは、危機が短期で収束することを想定したものだった。この状況を緩和し乗り越えるために、国政選挙後の新政権がまず取り組むべきことは国家予算の補正であることに違いない。

では、今回の選挙で競争している各政党の公約と現実はどう相関しているのか?与党人民党は経済危機を脱することについて、何らの解決策も提示していない。単に貧困を2分の1に削減するため借金負担を軽減させ、貸出金利が月利1%を超えないようにすると公約しただけだ。しかし、現実を見ると貧困削減の機会は無く、逆に貧困を増加させないためにどうするか、どのように防止するかが来年の最大の課題となっている。

民主党は国家補正予算によって投資歳出を削減し、個人や企業に交付する資金を調達すると公約にした。

経済危機からの脱出、成長や競争力向上のためには、次の3つのことに新政権が取り組むべきである。

第1. 具体的な計画を立て実行できる専門性の高い内閣を編成し取り組むこと。昨日、S.エルデネ民主党党首は、民主党が過半数の議席を獲得できれば、誰を首相にするかを発表した。また、近くその内閣を構成する閣僚人事を発表すると言った。

これは良い見本である。選挙に出馬している他の政党、連立もこのように発表するべきである。このような発表から、私たちは誰がコロナ後の経済を立て直すために政策を実行できるのかを見極めた上で投票できるからだ。

第2. 2020年度予算を至急補正し、急を要さない投資を止め、歳出削減を行うことが重要である。これには、特定建設開発、政府役人の贅沢、不要な出張や交通費(役人の車の維持費)が含まれる。このコロナ危機は、低所得者層にとって大きなダメージとなっているため、社会保障政策を手厚くする必要がある。

この政策は需要面からは経済的に支援し、供給面からは企業に低金利融資を交付する機会を提供しなければならない。

第3. コインには表と裏がある。コロナ危機による影響の良い面は、各機関に対して電子化を求めていることだ。ビジネスにおいては、技術に基づいたソリューションのみが損失を最小限にすることができる。また、マネジメントソフトを活用し、組織の活動をより柔軟にし、生産性を向上させることができる。

コロナ危機を乗り越えるために私たちは今回の選挙で正しい選択をしなければならない。上記の3つのことに取り組むことができる政治家を選択することが、モンゴル国が今後10年でベネズエラの道を歩むのか、もしくはフィンランドの道を歩むのかが決まる。

口先だけの者を選ぶのか、実行力のある専門家を選ぶのか、国民の選択が試される。

ダムバダルジャー・ジャルガルサイハン