2020年の財政赤字は倍に膨れ上がる

2020年の国政選挙の前に補正予算を行わないと言っていた財務大臣だが、選挙で再選し財務大臣を続投することになり、2020年の補正予算を行うと話した。先週、閣僚会議が開かれ、2020年度の補正予算案が審議され国会に提出されることとなった。このため8月17日に臨時国会が開かれる。この臨時国会で審議される議題の1つが補正予算案である。

財政赤字はGDPの5.1%以内におさまるように計画されていた。しかし、この数字は今10%になろうとしている。例えばEU連合では、正常な経済活動における財政赤字幅はGDPの2%以内になるように維持すべきという厳しい条件が設けられている。

しかし、モンゴル政府はGDPに占める財政赤字幅を5%から10%に引き上げようとしている。では、どのように予算を補正するのか?法律では、毎年11月下旬までに翌年の予算を可決しなければならない。従って、昨年の11月下旬に可決成立した2020年度予算では、歳入11兆7千億トゥグルグ、歳出13兆8千億トゥグルグ、財政赤字は2%となっていた。

だがそれ以降、新型コロナウイルスの対策措置など必要な活動が増え、今日の補正予算案では歳出は増加することとなった。また歳入は1兆2千億トゥグルグ減少している。歳入減少は年末までに3兆トゥグルグに上ると予測されている。周知のように新型コロナウイルスにより、モンゴルの輸出額は激減している。

補正予算案では、具体的に医療分野関連の支出として1,200億トゥグルグを追加する。また、各種税金を引き下げた。これにより支出は150億トゥグルグ増加する。もうひとつ、大きな支出は新型コロナウイルスの影響を受け、10月1日までの期限ですべての児童に毎月支給される児童手当金が、この支給期限を年末までに延期した。この児童手当金は児童一人10万トゥグルグである。このように支出額が増えている。では、支出から除外されたものは何か?予算が確定されておらず、緊急性が低いとされる5,400億トゥグルグの投資が延期されている。

歳出を増やし、歳入が減少しているこの状況では、財政赤字額は3兆8千億トゥグルグになっている。これはGDPのおよそ10%に相当する。補正予算は本当に必要なのか?新型コロナウイルスによる緊急事態の中で、補正する他に選択肢がないのか?

今日の緊急事態の状況下では、世界各国は経済再生および雇用維持のため、特に医療環境改善のために様々な取り組みを行い、予算を増やすなどの特別措置を取っている。モンゴルも世界の動きに合わせていることは妥当である。

しかし各国と異なる点は、モンゴルの歳出はGDPの3分の1に達していることである。これは何を意味しているのか?これは市場経済における政府の参入が増えていることを示している。政府の参入が増えれば増えるほど、経済の自由が低迷する。このことについて3つのことに焦点を当てて説明したい。

1つ、モンゴル政府はこの緊急事態下で予算を増やす際に福祉手当を拡充させている。すべての児童に毎月10万トゥグルグを支給することになっている。10億トゥグルグの預金がある家庭の子どもに10万トゥグルグを支給する必要はないと思う。全世帯を対象にしたこのような福祉手当は「政治的な分配」と言われるものである。ここで特に注意を引いていることは、社会保険料の中に「社会福祉基金」というものがある。この基金から児童手当金を拠出すると言っている。そもそも社会福祉と関連するもの、具体的には社会保険、健康保険、年金などは政府の予算に入れるべきではない。国家予算と社会福祉、年金基金などは別々にあるべきものである。

2つ、予算執行である。財務大臣は予算を補正し、歳出を増やすが、歳入が減少していると言っている。基本的に民主主義国では、補正予算を話す前に予算執行について報告する。何をして、どうして補正する必要があるのかについて財務大臣には説明責任がある。財務大臣は予算執行報告書を監査庁に提出し、承認されなければならない。しかし、モンゴルにはこの仕組みがない。そのため、財務大臣がモンゴルの財政を握る“王様”になってしまっている。国有企業は増えているが、その収入や予算が幾らあり、どのように機能しているかを私たちは知らない。 3つ、その3兆8千億トゥグルグの財政赤字を誰が支払うのか?国民は財政赤字を誰が支払っているかを知っているかと思う。私たち、私たちの子どもが税金で支払っている。政府が大きくなり、予算が膨張しているということは、国民が支払うべき税金も膨張しているということを理解しなければならない。

金価格が2000ドルを超えた

金価格は史上最高値を更新し、1オンス当たりの価格は2,000ドルに達したというニュースが世界中を駆け巡った。1オンスとは約28.3グラムである。モンゴルでは金の採掘量が多いため、トン単位で話す。つまり、金1トンが7千万ドルになったということである。金価格はなぜ上昇したのか?

経済に先行き不透明の状況が起こると貴金属の価格が上昇する。それはなぜか?

まず、すべての価値を維持する通貨(キャッシュ)というものがある。次に証券、その次に貴金属がある。通貨と証券に不透明な状況が生じると、資産は貴金属に向かう。今はそのような状況にある。

2000年に金の価格は1オンス当たり600ドルだった。2008年の世界金融危機後に1オンス当たり1,775ドルとなった。そして現在2,000ドルになっている。今回の金の価格上昇には、世界中で拡大している新型コロナウイルスの影響が大きい。この価格上昇はいつまで続くのか。なぜ、金の価格は上昇するのか。

金は世界中でその価値が認められたものである。金は色や重量が変わらない唯一の金属である。

そのため世界各国、とりわけ先進国は中央銀行の金庫に金をできるだけ多く貯蔵しようとする。最近のデータでは、アメリカ合衆国の銀行には8,133トンの金が保管されており、世界最大である。次いでドイツの銀行に保管されている金で、その量は3,370トンである。その次にイタリア、フランスの順となり、ロシアは2,100トンで世界5位となっている。6位に1,850トンで中国が入っている。実はこのランキングにモンゴルも入っている。モンゴルの中央銀行には19トンの金が保管されている。ではその他の金はどこへ消えたのか?モンゴル銀行は今年上半期だけで11トンの金を購入しているにもかかわらず。

モンゴルは金を国内で精錬する工場がない貧困国だからである。金の精錬工場の建設には10億ドルが掛かる。もし、私たちが自国で金を精錬できれば、金の貯蔵量が増える。

現在、私たちは金を精錬してもらうためにイギリスやスイスに飛行機で運んでいる。そこで純度99.9%の金に精錬され、それをその時の相場価格で売却している。

モンゴルは2016年に19トンの金を輸出し、7億6千万ドルの収入を得た。金1トン当たりは4,000万ドルになっていた。2019年に9トンの金を輸出し、4億2千万ドルの収入を得た。金1トン当たりは4,600万ドルとなっていた。今日、金1トン当たりの価格は7,000万ドルになっている。

金は4つの形で消費されている。金全体の年間消費量の50%は宝飾品として使われている。主な宝飾品消費国はインドと中国である。25%は投資目的として消費される。10%は中央銀行に外貨準備高として保管される。残りの10%は最新の電子技術製品に使われる。

この金の価格上昇はモンゴルの金の採掘増加を後押ししている。また、モンゴル政府は去年から「ゴールド2」というプログラムを実施し始めた。モンゴル銀行は金の採掘を行っている事業者にソフトローンを交付している。

先ほどモンゴル銀行は今年上半期に11トンの金を購入したと話した。モンゴル銀行の金の購入量が増加したことに、新型コロナウイルスによる国境封鎖が影響しているということを忘れてはいけない。国境が封鎖されていない時、しばしば金は海外に密売されていた。そのため、モンゴル銀行の金の購入量は少なかった。 また、金の採掘量を増加させるということは、環境問題として水資源の問題も出て来る。モンゴルにとって金は重要だが、水はもっと大事である。このことに私たちは注意しなければならない。

新型コロナウイルスの影響で外国に足止めされているモンゴル人

モンゴルは1月26日からすべての教育機関の活動を停止し、国境を封鎖した。1月27日からは、外国から来る人たちを隔離するようになった。1月27日から今日まで51回のチャーター便を飛ばし、外国から16,000人の自国民を帰国させてきた。現在も鉄道やバスで帰国する自国民をロシアとの国境を通じて受け入れている。

今日、外国にいる11,000人のモンゴル人が帰国申請をしている。MIATモンゴル航空は大型機を使ってチャーター便を運航している。今まで就航したことがない国、都市にまで行っている。なぜならば、MIATモンゴル航空は国営航空会社であり、他国との交渉ができ、運行実績もあり、比較的安価で飛んでいる。

この結果、現時点ではモンゴル人帰国者293人が新型コロナウイルスに感染していることが確認されている。国内では感染者は確認されていない。死者も出ていない。帰国者のうち260人がすでに退院している。33人が治療中であり、そのうちの3人は軽度、1人が中程度という状況である。

外国にいるモンゴル人は非常に厳しい状況に置かれていることを、私たちはSNS上で見聞きしている。また、外国から来た人たちからも隔離施設や上下水道問題、食事の品質に関して苦情が出ている。隔離期間はなぜ21日間なのか。世界各国のように14日間にしてはいけないのかという疑問の声も出ている。これらの問題を政府は考慮しているかと思う。

今後はどうなるのか?モンゴルで実施している検査について具体的に公表してもらいたい。新型コロナウイルスの検査を外国から来ている人たちに飛行機から降りた時点で実施しているのか?もしくは数日後にしているのか?再検査で感染が確認されている事例があっため、隔離期間を21日間と決めているという。その再検査の頻度などについて関係機関は具体的に公表してほしい。 また、ワクチンの問題もある。世界中で60ものワクチン開発プロジェクトが進行中である。そのうちの約20のプロジェクトがロシアで行われている。このワクチン開発の進捗や開発されたワクチンに関して、モンゴルはどの国から入手可能であるのかについて私たちは来週のニュースで説明できればと思う。